法律相談例


もしかして霊感商法かなと思ったら

 最近,通勤中に交通事故に遭ったり,妻から離婚話を切り出されたりして,精神的に参っていたため,運気を上げるというセミナーに参加してみました。私の話を聞いてもらうと,スタッフの人から「教祖に儀式を行ってもらった方がいい」などと勧誘を受け,続いて現れた教祖を名乗る人物からも「あなたは前世で悪事を行いすぎた。神から力を授かった私が,今すぐ儀式を行って運気を上げなければ,あなたに災難が重なるだろう。」などと告げられました。まさか宗教団体の主催するセミナーだったとは思ってもみなかったのですが,教祖の言葉を聞いて不安に駆られてしまい,直ちに200万円を準備して儀式をしてもらうことにしました。しかし,儀式はほんの5分足らずで終わってしまい,騙されたのではないかと感じています。儀式のために支払った200万円を取り戻したり慰謝料を請求したりすることはできないでしょうか。

もしかして霊感商法かなと思ったら

 人の抱える不安等について,超自然的な事象が原因であると告げて不安感をあおって,現状から脱却するために必要であるとして,物品を購入させたり儀式を行ったりして高額な金銭を支払わせる霊感商法と呼ばれる手法があります。

 霊感商法に係って支払ってしまったお金を取り戻すための手段の一つとして,不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる場合があります。不法行為に基づく損害賠償請求という手段をとることには,霊感商法に関する契約の直接の相手方のみならず,その背後に存在する組織等に対しても使用者責任を追及して損害賠償請求をすることができる場合があったり,精神的な損害を被ったとして慰謝料の支払いを求めることができたりする場合があるというメリットがあります。しかし,不法行為に基づく損害賠償請求をするには,霊感商法が違法なものであると認められなければなりません。

 宗教団体等が,その宗教の教義を実践したり布教をするための一環として,儀式などの宗教的役務の報酬を求めたり宗教的意義のあるとされる物品の販売を行ったりすることは,支払の対価が高額であるからといって直ちに違法となるわけではないと考えられています。

 しかし,霊感商法が宗教団体等の宗教的行為の一環として行われるとしても,それが社会的に相当といえる範囲を逸脱するようなものである場合には,違法となります。どのような場合に社会的な相当性を逸脱するのかについては複数の裁判例がありますが,宗教団体等により行われた行為が,被勧誘者の自由な意思決定を阻害して被勧誘者に過大な金銭の支出をさせたかどうかという点を重視する傾向にあると考えられます。

 ご相談の事例では,セミナーにおける勧誘状況や教祖等の言動など,当時の具体的な状況や資料の有無等についてさらに詳細をお伺いした上で,請求が認められる可能性があるかどうかを丁寧に検討する必要があるでしょう。

 不法行為に基づく損害賠償請求という手段は選択肢の一つにすぎませんが,お心当たりのある方は,詳細をお伺いしながら取り得る手段の一つについて検討し,ご説明させていただきたいと思いますので,一度事務所にお越しいただけたらと思います。