一般民事事件


アパート経営 家賃を支払わない人への対処法を教えて

 

 私は、父が残してくれた小さなアパートを経営しています。入居者のうちの一人が、入居後2年くらいの間は家賃をきちんと払ってくれていたのですが、半年くらい前にリストラで会社を退職したとかで、家賃の支払いが遅れ気味になり、現在では2か月分が滞納という状態です。不動産屋さんが作ってくれた「賃貸借契約書」によると、借主が家賃を1か月分でも滞納した場合は、契約を解除することができるとなっています。お気の毒ですが、これだけ滞納が続いている以上、ぜひ出て行ってもらいたいと思っています。契約書のこの条項に基づいて出て行ってもらうことはできるでしょうか。そのためには、どのような手続を踏めばいいでしょうか。

 また、今回のケースのような家賃の滞納を防止するために、何かいい方策はないでしょうか。

1 民法の大原則として、契約自由の原則と呼ばれるものがあります。この原則に従えば、当事者(家主と借主)間の契約で、どのようなことを取り決めるのも自由ということになり、1か月分の家賃滞納によって契約を解除できるという条項も、有効であるということになりそうです。

 

  しかし、それではあまりに借主に酷であることから、判例によって形成された「信頼関係破壊理論」というのがあります。これは、「両当事者間の信頼関係が破壊されたと認められない特段の事情がある場合には解除を認めない」というもので、これが適用される結果、比較的軽微な家賃の滞納によっては契約解除ができないということになります。

 

  ご相談のケースで解除が認められるかどうか、微妙なケースだと思われますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

 

2 出て行ってもらう場合の一般的な流れとしては、まず、借主に対して滞納家賃の支払いを催促し、払わなければ契約を解除する旨、内容証明郵便で通知します。それでも支払わず退去もしない場合には、訴訟を提起することになり、判決を得て、明渡しの強制執行を行うということになります。

 

とはいっても、すべてのケースで全ステップを経なければならないというわけではありません。解除の内容証明郵便を出しただけで出ていく人もいますし、訴訟の途中に和解によって立ち退きを合意する場合もあります。それぞれの手続にかかるコストや相手方の対応の仕方、滞納家賃の回収可能性などを総合的に考えながら、弁護士を依頼するか、どのように手続を進めるか、和解をするかどうかなどを考えていくことになります。この点も、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。

 

3 世間一般の善良な人は、そもそも滅多に家賃を滞納しませんし、家賃を払えなければ、自分から出ていきます。解除の内容証明郵便まで出さなければならない人、まして、判決を得て強制執行しなければない人は、全体からみれば極わずかです。しかし、そういう人は、滞納家賃を最後まで支払わないことも多いため、弁護士費用や手続費用の他に、退去させるまでの家賃が入らないという損害までも被ってしまうことになります。

 

  そういう人を契約段階で見分けることができればいいのですが、それは相当難しいことです。そうなると、最終的に訴訟で判決を得た場合に、家賃や損害金を強制執行で回収できる人なら安心ということになります。そういう人であれば、その人が「善良」かどうかにかかわらず、家賃を払わないわけにはいかないことになるからです。

 

  そこで、契約をしても安心なのは、「強制執行できるだけの財産を持っている人」ということになります。相手方の預貯金を調べることは事実上不可能ですあり、手っ取り早いのは、勤務先です。借主又は保証人が、公務員や大会社勤務であれば、退職しない限りは、判決で認められた家賃・損害金を給料の差押えによって回収できるので、契約をしても安心ということになります。これ以外に手っ取り早く調べられる財産としては、自宅の不動産があります。借主が不動産を持っていることは稀でしょうから、保証人の自宅の登記を調べ(今は、インターネットで調べることも可能です。)、保証人が確実な不動産を有していれば、安心と考えていいと思います。

  とはいっても、「そんなふうに選別していたら借主が見つからない」ということもある

 でしょう。確かに、賃貸経営にはリスクはつきものです。しかし、せっかくの資産をでき

 るだけ有効に活用できるよう、どのような場合にどのようなリスクがあるかということを

 しっかり把握しながら、賃貸経営を行っていただきたいと思います。

 


交通事故を起こしてしまいました

 

 東京で一人暮らしをしている大学生の息子が深夜自動車を運転している際に交通事故を起こしてしまいました。息子が運転していた自動車は私の名義で、息子がどうしてもというので買い与えて使わせていたものになります。

 息子が交差点を青信号に従い右折しようとしていたところを、対向車線から単車が直進してきて衝突してしまったとのことです。

 被害者の方は息子と同じ大学に通う学生で、今回の交通事故により頸椎骨折等の大けがを負ってしまいましたがなんとか一命を取り留めたようです。しかし、後遺症により頸部の可動域に制限が生じてしまったようです。

幸いにも被害者の方の命は助かりましたが、今後は被害者の方への賠償の問題も残っております。保険会社の担当者に示談交渉はお任せしていますが、今後息子に生じる責任の内容や程度について教えてください。

 交通事故を起こしてしまった場合、運転者は民事責任の他に刑事処分や行政処分を負い得ることになります。

民事責任は被害者に生じた損害の賠償であり、刑事処分は刑法等に基づく刑罰、行政処分は道交法に基づく免許停止・取り消し等の処分となります。

 損害賠償責任の根拠となる法律としては、主に民法709条及び自賠法3条があります。

自賠法の責任は人身事故の賠償に限られますが、民法上の不法行為責任は人身事故のみ

ならず物損事故の賠償も含まれます。

民法上の不法行為責任の義務負担者は不法行為者すなわち運転者本人となるのが通常ですが、自賠法の運行供用者責任については、運転をしていない運行供用者、例えば自動車の所有者や使用権限を有する人も賠償義務を負うことになります。

 したがって、本件では、運転者である息子が民法上の不法行為責任を負うとともに、父

親も自己所有の車を了解の下使わせていたことから自賠法に基づく責任を負担する可能性

があります。

 損害賠償額を決める基準としては、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士会(裁判所)基準という3種類があります。自賠責保険が最も定額であり、弁護士会(裁判所)基準が最も高額となります。

 損害の種類・内容について、まず物損ですが、本件では被害者の運転していた単車が破損していた場合その修理費が損害となります。また場合によっては、代車使用料や衣類等所持品の損傷についても賠償義務が生じる余地はあります。

 次に、人損については、まず症状固定(治療を継続してもこれ以上の回復や改善が見込めないと医師が判断した状態をいいます。)までの損害として、治療費、入院雑費、通院交通費、付添交通費等が積極損害(事故により支出を余儀なくされた費用)として生じ得ます。休業損害(治療のために休業した期間につき得られなかった収入分の損害)については、本件被害者は大学生で就労前であるのでアルバイトしていた等の事情がない限り生じません。さらに、傷害慰謝料も損害に含まれますが、具体的な金額は入通院の期間等に応じて定額化された基準に基づき算出されます。

次に、症状固定後の損害として後遺障害による逸失利益があります。これは後遺症に基づく労働能力低下により減少する収入分に関する損害をいいますが、具体的には、被害者の事故前年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数(中間利息控除のための係数)という計算式により算出されます。労働能力喪失率は認定された後遺障害等級に応じて定められているところ、本件被害者の頸部可動域制限という後遺症は後遺障害等級表に従うと82号の「脊柱に運動障害を残すもの」に該当する可能性がありますので、その場合、労働能力喪失率は45%となります。

 また後遺障害慰謝料も損害に含まれますが、これについても認定された等級に応じて定額化されており、弁護士会(裁判所)基準に従うと、8級に対応する後遺症慰謝料は830万円となります。

 被害者に損害の発生拡大について落ち度が認められる場合、損害合計額確定後過失相殺がなされることがあります。過失割合については、過去の判例を類型化した一応の基準があり、それに基づき算出されることが多いです。

かかる基準に基づき形式的に本件事故の過失割合を算出すると、加害者側85:被害者側15となります(別冊判例タイムズ16号【126】図参照)。もっとも、徐行の有無や合図の有無等によってかかる過失割合が修正されることもあります。

以上が一通りの説明となりますが、個々の事情や事実関係に応じて最終的な賠償額は大きく異なり得ますので、一度専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

 


個人情報の管理を怠ると・・・

 

 私は,趣味で小規模な合唱団を主宰しています。団員はみなアマチュアで,人数は30人くらい,毎週1回市民会館で練習をしています。団員間の連絡に使うために,入団時に団員の氏名,住所,電話番号,メールアドレスを書いてもらい,PCで保管していますが,そのデータの入ったPCがウィルスに感染してしまい,名簿の一覧がインターネットに流出してしまいました。個人情報保護法という法律があるそうですが,私が何か責任を負うことがあるのでしょうか。

1 近時,個人情報保護についての意識が高まり,個人情報保護法という法律があることをご存知な方も多いと思います。個人情報保護法とは,個人情報を使って事業をしている企業や団体,個人に対して,個人情報を正しく取り扱うように義務付ける法律であり,違反をすれば6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることあります。

 

  ここにいう個人情報とは,単独で,または他の情報と容易に照合されることで,特定の個人を識別することができるような情報をいいます。氏名はもちろん,住所や電話番号,アルファベットや数字の羅列であるメールアドレスなども,氏名と結びつけば個人情報に該当します。

 

  一方,個人情報保護法による規制の対象となるのは,「個人情報取扱事業者」であり,これは,過去6ヶ月の間に5000を超える個人情報をデータベースにして事業活動に利用している民間の事業者のことをいいます。したがって,例えば1000件のメールアドレスしか保有していない会社はこれにあたりませんし, 5000件の住所録を個人的に年賀状や暑中見舞いに利用していてもこれにあたりません。

 

2 ご質問の事案では,あなたの管理している情報は「個人情報」にはあたりますが,あなたは「個人情報取扱事業者」にあたらないので,個人情報保護法に違反することはありません。

 

  しかし,個人情報は,悪用されれば当該個人に被害を与える可能性が十分にあります。ことに,インターネットに流出した情報は消去・回収がおよそ不可能であり,将来にわたって悪用されるおそれすらあります。あなたには,事業に利用するしないに拘わらず,このような他人の個人情報を管理する者として十分な注意を払う義務があります。それににもかかわらず,不注意によってPCをウィルスに感染させ,他人の個人情報を流出させてしまい,それによって当該個人に損害が生じた場合には,民法上の損害賠償責任を負うことがあります。ここにいう損害には,精神的な損害すなわち慰謝料も含まれます。

 

小規模であっても,また事業に利用しない場合であっても,個人情報の取扱には細心の注意を払い,情報の流出を防ぐことが必要です。

 

 


交通事故・・・人身傷害保険金の取り扱いは?

 

 バイクを運転中自動車と衝突して大怪我をしてしまいました。幸いにして人身傷害補償保険に加入していたので、治療費等はそれで賄うことが出来ましたが、人身傷害補償保険で賄えなかった損害については加害者に損害賠償請求訴訟を起こそうと思っています。今回の交通事故においては私にもスピードの出し過ぎという過失があったのですが、訴訟を起こした場合、受領した人身傷害保険金はどのように扱われるのでしょうか。

 交通事故をめぐる損害賠償請求訴訟においては、予め加害者から一部弁済を受けていたり、自賠責保険から賠償額の支払を受けていたりした場合等には、その額を賠償額から控除する、いわゆる損益相殺がなされます。また、損害賠償請求訴訟においては、被害者に過失があった場合には過失相殺がなされますが、過失相殺と損益相殺が競合した場合、通常、まず総損害額を算出し、そこから過失相殺を行って、過失相殺後の残額から損益相殺がなされます。相談者が受領された人身傷害補償保険金も損益相殺の対象となります。人身傷害補償保険は自動車保険(任意保険)の一つですが、大要、交通事故の被害者となった場合に、自身の過失の有無を問わず、契約の保険金額の範囲内で実際かかった治療費や休業損害等の損害額が支払われる保険です。人身傷害保険で支払われる保険金額は保険会社の約款記載の基準に従って算出されます。そして、この約款記載の基準に従って算出された保険金額は、訴訟提起した場合に裁判所が算定する、いわゆる裁判基準額よりも低額であるのが通常です。

そのため、被害者は、予め人身傷害補償保険金の支払を受けていても、保険金額と裁判基準額との差額の支払いを求めて加害者に対して訴訟提起することが多いようです。

 ご相談の点について、上記の通り、人身傷害補償保険金が被害者の過失の有無を問わず支払われるものであることに起因して、被害者が予め人身傷害補償保険金を受領しており、かつ、被害者にも過失がある場合、どの範囲で損益相殺がなされるのか(=どの範囲で保険会社が保険代位できるのか)については従来から様々な見解が主張されており実務上も明確な基準が確立していなかったのですが、近時、この点について判断をした最高裁判例が出ました。すなわち、最判平成24年2月20日は、被害者に人身傷害保険金を支払った保険会社は、「保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当である。」と判示しました。

非常にわかりにくい言い回しですが、要は、 予め人身傷害保険金を受領していた場合、当該保険金は、まず過失相殺された金額部分に優先的に充当され、残額についてのみ損益相殺の対象となるということです。例えば、被害者の総損害額が3000万円、予め受領していた人身傷害保険金が1500万円、2割の過失相殺がなされるとした場合、保険金1500万円から過失相殺がなされる600万円(3000万円×0.2)を控除した残額900万円について、過失相殺後の2400万円から損益相殺されるということになります。結局、被害者は加害者に対し1500万円損害賠償請求できるということになります。この考え方はいわゆる訴訟基準差額説といわれる考え方ですが、この最高裁判決によって、上記の論点に一応決着がついたといえます。

 


借りたお金の時効について知りたい

 

 随分古い話なのですが、私は平成14年に、Aから100万円を借金しました。そのお金は、平成15年4月1日に返済するという約束だったのですが、Aから特に請求を受けることもなかったため、申し訳ないとは思いつつ、まったく返済をしていませんでした。

 ところが、平成27年10月1日のお昼頃、Aは、事前の連絡もなく突然私の自宅に来て、「いますぐ100万円を返せ」と、ものすごい剣幕で請求してきました。突然のことだったので、私はとても戸惑い、怖かったのですが、さすがにそんな大金はないと言って断ったところ、Aは「ではとりあえず1000円でもいいから今すぐ返せ」と怒鳴りました。そこで、私は1000円をAに手渡し、Aに帰ってもらいました。

 それから1か月後、今度は、残りの99万9000円を支払え、という内容の請求書がAから届きました。友人に相談したところ、時効だから払わなくてよい、というアドバイスをもらったのですが、本当に払わなくてもいいのでしょうか。

 あなたがAさんから借りたお金をAさんに返す義務(貸金返還債務)は、弁済期から10年間で消滅時効にかかるのが原則です(民法167条1項)。また、Aさんがサラ金業者などの金融業者だった場合は、期間が短縮されて、5年間で消滅時効にかかります(商法522条)。

 本件の貸金返還債務の弁済期は平成15年4月1日ですから、いずれにせよ、Aさんがあなたのご自宅に押し掛けてきた平成27年10月1日の時点では、消滅時効が完成していたことになります。この点に限れば、ご友人のアドバイスは正解です。

 しかし、債務者であるあなたは、平成27年10月1日、Aに対して1000円を支払ってしまいました。この支払行為は、法的には100万円の貸金返還債務の一部弁済にあたり、同債務が存在することを承認する行為にあたると評価するべきことになります。そして、このような債務の承認があった場合は、消滅時効にかかっていることを債務者が知っていた場合はもとより、知らなかった場合も、以後、債務者は消滅時効を主張することができなくなるというのが最高裁の判例です。

 したがって、原則として、あなたは消滅時効を主張することができず、残りの99万9000円を支払わなければなりません。

 ただし、まったく争う余地がないかというと、必ずしもないとは限りません。

 まず、Aさんはあなたに対して、ものすごい剣幕で請求したり、怒鳴ったりしたとのことですが、これらの事実を証明できれば、強迫による承認だったとして、承認の取消しを主張する余地があります。この主張が認められれば、あなたは消滅時効を主張することができます。

 また、近時の下級審判例に照らせば、Aが金融業者であるなど消滅時効についてよく知っている場合で、かつ、あなたが時効についての詳しい知識に欠けていたためAの都合のいいように利用されてしまった場合などのように、消滅時効の主張を認めても信義則に反するとはいえない特段の事情が認められる場合には、例外的に、なお消滅時効の主張が認められる可能性があります。

 いずれにせよ、難しい交渉が必要な事件ですから、今後は、弁護士を立てて交渉することをおすすめいたします。

 


誹謗中傷被害を受けているため改名をしたい

 

  生活をするうえで困っていることがあり、相談いたしました。それは、私の名前のことです。最近、私と同姓同名の方が、事件を起こして、新聞やテレビなどで事件のことが大々的に報道されました。そのせいでしょうか、ご近所の方から、事件の犯人と間違われることもありますし、友人からも、私の名前をからかわれることがあります。家の郵便物に、「犯罪者出て行け」と書かれたチラシが入っていたこともあります。また、私が犯人だとの書き込みがネットにされているようです。このままでは、気が滅入りそうです。名前を変更することはできないのでしょうか。

 それは、災難でしたね。ネット社会では、今後も情報が残り、継続的に生活に支障が生じるのではないかという不安もおありになることでしょう。

 さて、改名の手続は、戸籍法107条の2に規定されており、「正当な理由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」とされています。この「正当な理由」があるかどうかは、家庭裁判所の家事審判官(裁判官)が判定することになります。

 では、この「正当な理由」とは、どのようなものでしょう。改名申立書に記載されているものには、①奇妙な名である、②外国人とまぎらわしい、③むずかしくて正確に読まない、④神官、僧侶となった、⑤同姓同名者がいて不便である、⑥通称として永年使用した、⑦異性とまぎらわしい、⑧その他の8つが記載されています。

 相談者様の事案では、上記の⑤に該当するかが問題となります。⑤に該当するケースとしては、過去、実際に、「田中角栄」という名前の改名申立てが認められたケースもあります。

 手続きとしては、裁判所に対し、申立書を提出し、審判を受けることになります。

 改名申立てが認められても、免許の記載の変更などの事務手続きも多数発生いたします。余計なことかもしれませんが、お名前の由来や命名された親御さんのお気持ちなどをもう一度確認された上で、改名が必要かについては、慎重にご判断されることをお勧めします。また、ネット上の書き込みなどについては、プロバイダーに削除を依頼するという方法で対処することも可能です。

 それでも、改名の手続きを進めたいとお考えになる場合は、申立てに当たり、同姓同名の方が起こした事件の記事、相談者様宅に投函されたチラシ、ネットの書き込み、相談者様が日常生活でどれだけ不便を強いられているかを説明した陳述書などを提出する必要があります。そのうえで、相談者様がどのような不便を強いられているかについては、具体的に説明する必要があります。申立書の記載方法や裁判所に提出する書類の作成などについて、ご不明な点があれば、一度ご相談ください。

 


B型肝炎の給付金を受け取れますか?

 

  私は、30年ほど前、成人した記念に献血をした際に、B型肝炎なので献血できません、という指摘を受けました。驚いて近所の病院で改めて血液検査を受けたところ、やはりB型肝炎だという結果がでましたが、その後、特に身体に不調を感じることもなかったので、特別な治療をすることもなく、現在に至っています。B型肝炎の患者が受けられる給付金というものがあると聞いて、この前風邪で近所の病院にかかった際にかかりつけの医師に相談してみたのですが、「多分親御さんからウィルスをもらったんだよ。そもそも症状がでていないんだから給付金なんて考える必要ない。」と言われました。私の場合、B型肝炎の給付金というものはもらえないのでしょうか。

 あなたが、幼少時に集団予防接種を受けた際に、注射器の連続使用によってB型肝炎ウィルスをに感染させられたのであれば、国に対して訴訟を提起して和解をすることで、給付金を受け取ることができます。これを「B型肝炎訴訟」といいます。国が、注射器の連続使用による感染の危険性を放置していた非を認め、2011年に全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団と国との間で合意した内容(基本合意)に基づいてつくられた制度です。

 

 この訴訟により、長年B型肝炎によって苦しんできた患者が救済を受けられるようになりました。給付金の額は、肝がん・重度の肝硬変または死亡してしまった方(遺族が給付を受けられます)については3600万円,軽度の肝硬変の方は2500万円、慢性肝炎の方は原則として1250万円、症状が出ていない方(無症候性キャリアといいます)は50万円と定期検査費用等を受け取ることができます。

 

 あなたが、幸い慢性肝炎等の症状に至っていないのであれば、無症候性キャリアとして給付を受けることができます。今は症状がでていなくても、定期検査は絶対に必要ですし、先に給付金を受ける資格を取得しておけば、万が一将来重い症状が出てしまっても、簡易な手続きで差額の給付金を受け取ることができます。また、現在の給付金制度は、いまのところ平成34年1月12日までとされています。したがって、無症候性キャリアの方も、積極的に給付金を受給してください。

 

 給付金を受給するための要件は基本合意によって定められていますが、その内容は多岐に渡り、集めなければならない資料も多くあります。また、全国B型肝炎訴訟弁護団と国との間で、現在も協議中の要件もあります。例えば、集団予防接種でなく、出産の際に母親から感染した(母子感染といいます)のであれば、この訴訟の要件は満たさないことになりますが、母子感染かどうかは、あなたの過去の医療記録やお母様の医療記録等様々な資料を確認しなければわかるものではなく、あなたのように、かかりつけの医師から母子感染だと言われて訴訟を諦めていたものの、念のために全国弁護団に相談してみたところ、弁護士がさまざまな資料を検討した結果、最終的に母子感染ではなく給付金を受け取れたという方もいらっしゃいます。

 

 また、ご自身は母子感染であっても、お母様が集団予防接種によって感染したのであれば、やはり給付金を受け取ることができます(二次感染といいます)。

 

 このように、給付金を受け取れるかどうかの判断は、ご自分で簡単に判断できるものではありませんし、お医者様も法律の専門家でありません。まずは、全国B型肝炎訴訟東京弁護団所属の弁護士がいる当事務所にご相談ください。相談は無料ですし、この訴訟については、着手金等もいただいておりません。和解できた場合にのみ弁護士費用が発生し、支払われた給付金の中から報酬をいただくことになりますので、金銭的な負担を心配せずにご相談いただけます。

 また、肝炎は専門性の高い病気ですので、キャリア、重篤な症状にかかわらず、かならず、肝臓専門医のいる肝疾患専門医療機関で、早期に治療を受けるようにしてください。

 


債権の消滅時効について

 

 個人でスナックを経営しています。常連客限定でツケ払いを認めていますが、中には、ツケを清算しないまま店に来なくなってしまう方もいます。スナックのツケは1年間で時効になってしまうけれども、電話やはがきで請求すれば時効になるのが6か月伸びると聞いたので、ツケから1年ちかくたった客に対しては、6か月ごとに電話をかけたりハガキを出したりして請求するようにしてきました。最近の法改正で、時効期間が伸びたと聞きました。どのくらいまで時効期間が伸びたのでしょうか。

 民法は、2017年に大きく改正され、その中で、時効に関する規定も大きく改正されました。しかし、この改正は、2020年4月1日から施行されることになっているため、それまでは従来の規定が適用されることになります。

 

そこで、従来の規定(現行法)の内容から説明しますが、ご相談内容を拝見すると、どうやら少々誤解されている点があるのではないかと思います。

 

確かに、スナックのツケの消滅時効期間は1年間です(民法174条4号)。そして、電話やはがきで請求すること(これを「催告」といいます)によって、6か月間だけ時効の完成が猶予されます(民法153条)。したがって、たとえばツケから11か月が経過した時点で「催告」をすれば、そこから6か月(つまりツケから17か月)が経過するまでは、時効の完成が猶予されます。ここまでは、ご指摘の通りです。

 

しかし、この「催告」の効果が認められるのは最初の1回だけであり、再度の「催告」は効力を有しないとするのが判例です(大判大正8.6.30)。したがって、最初の「催告」から6か月が経過した時点で、訴えの提起などの手段を取らない限り、消滅時効は完成します。そのため、本件では、残念ながら、多くの債権についてはすでに消滅時効が完成しているものと思われます。

 

もし消滅時効が完成していないのであれば、訴えの提起や支払督促などの手段をとることになります。額が少額であれば、ご自身で少額訴訟を提起するなどの手段をとることも考えられますので、この点については別途ご相談ください。

 

また、消滅時効が完成していない場合はもとより、たとえ消滅時効が完成している場合でも、客がツケ(債務)の存在を承認すれば、客は原則として消滅時効を主張することができなくなります(最大判昭和41.4.20)。もちろん、強要などは一切できませんが、客が任意にツケの存在を承認してくれるのであれば、ぜひ書面で承認してもらってください。なお、その際には、債務の特定が不可欠となりますので、特定の仕方について個別にご相談いただくのが安全です。

 

続いて、改正された内容について説明します。今回の改正によって、債務の消滅時効期間は、原則として、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または②客観的に権利を行使することができる時から10年間の、いずれか早い方とされました(改正民法166条1項)。ツケ客との関係では、①が適用され、ツケのときから5年間で消滅時効が完成するというのが通常と思われます。つまり、今までよりも4年間、時効期間が延びることになります。