事前の相続放棄、できますか?

 私には両親と兄姉がいますが、子どもの頃から両親と兄姉とは仲が悪く、高校卒業と同時に自宅を出てから20年以上連絡をとっていません。最近になって、高齢になった父親が体調を崩して余命があまりないらしく、母親が私を探していることを人づてに聞いて知りました。自宅が父親の名義であることは知っていますが、父親がそれ以外にどのような財産を持っているのか知りませんし、何よりも今さら両親や兄姉と関わりたくありません。事前に相続放棄の手続ができると聞いたような気がしますので、放棄の手続をしたいです。

事前の相続放棄、できますか?

 

 いただいたお話からはご兄姉が何人いらっしゃるかが不明ですが、仮にお兄様1名、お姉様1名とすると、お父様が遺言書を作成することなくお亡くなりになったときは、お父様の遺産について、お母様2分の1、お兄様6分の1、お姉様6分の1、ご相談者の方6分の1の相続分で相続することになります。

 

 ご相談者の方は、今すぐに相続放棄の手続をしたいとのことですが、相続放棄の手続は、相続が開始されたこと(お亡くなりになったこと)を前提としており、相続が開始する前に相続分を放棄することは法的に認められていませんので、残念ながら今すぐに相続放棄の手続をすることはできません。相続放棄の手続については、ご相談者の方がお父様がお亡くなりになったことを知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所で行うことになります。

 

 事前に放棄の手続ができるとお聞きになったのは、遺留分の放棄のことではないでしょうか。遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められた一定割合の遺産の取得分であり、取得を認められた法定相続人の生活保障という面もあります。前記の家族構成の例での遺留分の割合は、お母様4分の1、お兄様12分の1、お姉様12分の1、ご相談者の方12分の1となります。

 

 遺留分の放棄は、相続放棄の場合と異なり、家庭裁判所の許可が必要となります。放棄の理由等を家庭裁判所が審査した結果、仮に遺留分の放棄が認められたとしても、相続人でなくなるわけではないので、お父様が亡くなった後に相続の問題が残ってしまいますし、遺留分の放棄は、確実に家業を継がせたい等の事情がある場合に、遺言書の作成とあわせて行われることが多く、ご相談のケースには向かない手続です。

 最後に余計な話かもしれませんが、お母様が相談者の方を探されているとのことなので、お父様がお亡くなりになった後に後悔されることがないよう、一度ご連絡をされてみてはいかがでしょうか。