法律相談例


交通事故を起こしてしまいました

 東京で一人暮らしをしている大学生の息子が深夜自動車を運転している際に交通事故を起こしてしまいました。息子が運転していた自動車は私の名義で、息子がどうしてもというので買い与えて使わせていたものになります。

 息子が交差点を青信号に従い右折しようとしていたところを、対向車線から単車が直進してきて衝突してしまったとのことです。

 被害者の方は息子と同じ大学に通う学生で、今回の交通事故により頸椎骨折等の大けがを負ってしまいましたがなんとか一命を取り留めたようです。しかし、後遺症により頸部の可動域に制限が生じてしまったようです。

幸いにも被害者の方の命は助かりましたが、今後は被害者の方への賠償の問題も残っております。保険会社の担当者に示談交渉はお任せしていますが、今後息子に生じる責任の内容や程度について教えてください。

交通事故を起こしてしまいました

 交通事故を起こしてしまった場合、運転者は民事責任の他に刑事処分や行政処分を負い得ることになります。

民事責任は被害者に生じた損害の賠償であり、刑事処分は刑法等に基づく刑罰、行政処分は道交法に基づく免許停止・取り消し等の処分となります。

 損害賠償責任の根拠となる法律としては、主に民法709条及び自賠法3条があります。

自賠法の責任は人身事故の賠償に限られますが、民法上の不法行為責任は人身事故のみ

ならず物損事故の賠償も含まれます。

民法上の不法行為責任の義務負担者は不法行為者すなわち運転者本人となるのが通常ですが、自賠法の運行供用者責任については、運転をしていない運行供用者、例えば自動車の所有者や使用権限を有する人も賠償義務を負うことになります。

 したがって、本件では、運転者である息子が民法上の不法行為責任を負うとともに、父

親も自己所有の車を了解の下使わせていたことから自賠法に基づく責任を負担する可能性

があります。

 損害賠償額を決める基準としては、自賠責保険基準、任意保険基準、弁護士会(裁判所)基準という3種類があります。自賠責保険が最も定額であり、弁護士会(裁判所)基準が最も高額となります。

 損害の種類・内容について、まず物損ですが、本件では被害者の運転していた単車が破損していた場合その修理費が損害となります。また場合によっては、代車使用料や衣類等所持品の損傷についても賠償義務が生じる余地はあります。

 次に、人損については、まず症状固定(治療を継続してもこれ以上の回復や改善が見込めないと医師が判断した状態をいいます。)までの損害として、治療費、入院雑費、通院交通費、付添交通費等が積極損害(事故により支出を余儀なくされた費用)として生じ得ます。休業損害(治療のために休業した期間につき得られなかった収入分の損害)については、本件被害者は大学生で就労前であるのでアルバイトしていた等の事情がない限り生じません。さらに、傷害慰謝料も損害に含まれますが、具体的な金額は入通院の期間等に応じて定額化された基準に基づき算出されます。

次に、症状固定後の損害として後遺障害による逸失利益があります。これは後遺症に基づく労働能力低下により減少する収入分に関する損害をいいますが、具体的には、被害者の事故前年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じたライプニッツ係数(中間利息控除のための係数)という計算式により算出されます。労働能力喪失率は認定された後遺障害等級に応じて定められているところ、本件被害者の頸部可動域制限という後遺症は後遺障害等級表に従うと82号の「脊柱に運動障害を残すもの」に該当する可能性がありますので、その場合、労働能力喪失率は45%となります。

 また後遺障害慰謝料も損害に含まれますが、これについても認定された等級に応じて定額化されており、弁護士会(裁判所)基準に従うと、8級に対応する後遺症慰謝料は830万円となります。

 被害者に損害の発生拡大について落ち度が認められる場合、損害合計額確定後過失相殺がなされることがあります。過失割合については、過去の判例を類型化した一応の基準があり、それに基づき算出されることが多いです。

かかる基準に基づき形式的に本件事故の過失割合を算出すると、加害者側85:被害者側15となります(別冊判例タイムズ16号【126】図参照)。もっとも、徐行の有無や合図の有無等によってかかる過失割合が修正されることもあります。

以上が一通りの説明となりますが、個々の事情や事実関係に応じて最終的な賠償額は大きく異なり得ますので、一度専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。