債権の消滅時効について

 

個人でスナックを経営しています。常連客限定でツケ払いを認めていますが、中には、ツケを清算しないまま店に来なくなってしまう方もいます。スナックのツケは1年間で時効になってしまうけれども、電話やはがきで請求すれば時効になるのが6か月伸びると聞いたので、ツケから1年ちかくたった客に対しては、6か月ごとに電話をかけたりハガキを出したりして請求するようにしてきました。最近の法改正で、時効期間が伸びたと聞きました。どのくらいまで時効期間が伸びたのでしょうか。

 

債権の消滅時効について

 

民法は、2017年に大きく改正され、その中で、時効に関する規定も大きく改正されました。しかし、この改正は、2020年4月1日から施行されることになっているため、それまでは従来の規定が適用されることになります。

 

そこで、従来の規定(現行法)の内容から説明しますが、ご相談内容を拝見すると、どうやら少々誤解されている点があるのではないかと思います。

 

確かに、スナックのツケの消滅時効期間は1年間です(民法174条4号)。そして、電話やはがきで請求すること(これを「催告」といいます)によって、6か月間だけ時効の完成が猶予されます(民法153条)。したがって、たとえばツケから11か月が経過した時点で「催告」をすれば、そこから6か月(つまりツケから17か月)が経過するまでは、時効の完成が猶予されます。ここまでは、ご指摘の通りです。

 

しかし、この「催告」の効果が認められるのは最初の1回だけであり、再度の「催告」は効力を有しないとするのが判例です(大判大正8.6.30)。したがって、最初の「催告」から6か月が経過した時点で、訴えの提起などの手段を取らない限り、消滅時効は完成します。そのため、本件では、残念ながら、多くの債権についてはすでに消滅時効が完成しているものと思われます。

 

もし消滅時効が完成していないのであれば、訴えの提起や支払督促などの手段をとることになります。額が少額であれば、ご自身で少額訴訟を提起するなどの手段をとることも考えられますので、この点については別途ご相談ください。

 

また、消滅時効が完成していない場合はもとより、たとえ消滅時効が完成している場合でも、客がツケ(債務)の存在を承認すれば、客は原則として消滅時効を主張することができなくなります(最大判昭和41.4.20)。もちろん、強要などは一切できませんが、客が任意にツケの存在を承認してくれるのであれば、ぜひ書面で承認してもらってください。なお、その際には、債務の特定が不可欠となりますので、特定の仕方について個別にご相談いただくのが安全です。

 

続いて、改正された内容について説明します。今回の改正によって、債務の消滅時効期間は、原則として、①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間、または②客観的に権利を行使することができる時から10年間の、いずれか早い方とされました(改正民法166条1項)。ツケ客との関係では、①が適用され、ツケのときから5年間で消滅時効が完成するというのが通常と思われます。つまり、今までよりも4年間、時効期間が延びることになります。