通貨オプションで損害が出てしまったら
小さいながらも会社を経営している者です。国内向けの商品を作り、堅実な経営を続けて会社の業績は順調でしたが、平成16年ころ、取引銀行から通貨オプションという名前の金融商品を購入するように強く勧められ、今後も融資を受ける関係もあることから、やむなく商品を購入してしまいました。購入当初は、円安に進みましたので、儲けも出ていましたが、リーマンショック後の円高傾向で、多大な損害が出ており、会社の資金繰りにも影響が出てきております。何とかならないでしょうか。
通貨オプションとは、為替デリバティブ商品の一種で、あらかじめ決めた価格で外貨を売買する権利のことです。近年、全国各地で、為替デリバティブについての紛争が起こっております。このような金融商品は、契約期間が5年から10年と長く、また、途中で解約する場合には多大な違約金がかかることから、ずるずると銀行への支払を続けている方が多いのですが、会社の資金繰りにも影響が出てきてしまうとなると抜本的な対策が必要です。
まず、当該商品の問題点について説明しますと、①商品性、②適合性、③説明義務、④優越的地位の濫用の4点から問題があるといわれています。それぞれについて、簡単に説明しますと、①は、極端に銀行に有利な商品が多いという点です。円安が必要以上に進んでも、ノックアウト条項などが設けられており、銀行が必要以上に損害を被ることはないのですが、逆に、円高が進んだ場合には、購入者が必要以上に損害を被ることになっています。次に、②は、輸入実績がない,為替リスクがないなど、リスクヘッジの必要のない会社に売りつけられている場合があります。さらに、③については、銀行は,商品の性質を十分説明しておらず、昨今の超円高のリスクを伝えておらず、顧客はリスクの大きさを理解していないことがあります。また、④については、銀行側が融資の継続など、購入者の立場の弱さにつけ込んで、商品を売りつけているというものです。
あなたの会社が商品を購入した際の事情を詳細に伺う必要がありますが、国内向け商品の製造を中心にされているのであれば、②の点が、今後も融資を受ける関係にあるという点が強調されているのであれば、④の点が問題となりそうです。また、この種の紛争の場合、①と③は、どのような事案でも問題となっています。そのため、あなたの会社が購入した商品には、種々の問題点が潜んでいる可能性があり、商品の解除、損害賠償、又、銀行側との違約金・未払い金の減額交渉の余地があるでしょう。
次に、対処の仕方としては、まずは、弁護士に相談の上、銀行への支払を停止し、購入した金融商品の問題点を調査の上、銀行と交渉を行うことになります。そこで交渉がまとまらないときは、その後、全国銀行協会に対して金融ADRを申立て、未払い金の減免を求めることになります。この手続は、通常の訴訟とは異なり、短い期間で結論が出ますので負担の少ない方法として活用されています。また、既払い金の返還については、訴訟を提起するという方法も考えられます。
このまま、支払を続けていけば、経営を圧迫しますので、一刻も早く弁護士に相談され、対策を採ることが必要であると考えます。なお、最後に一言付け加えさせていただくと、銀行側がそのような商品を売り付けた会社は、優良企業である場合がほとんどですので、あなたの会社も、早急な対策を採ることで、以前のような堅実な経営を回復することができるはずではないでしょうか。
もしかして霊感商法かなと思ったら?
最近、通勤中に交通事故に遭ったり、妻から離婚話を切り出されたりして、精神的に参っていたため、運気を上げるというセミナーに参加してみました。私の話を聞いてもらうと、スタッフの人から「教祖に儀式を行ってもらった方がいい」などと勧誘を受け、続いて現れた教祖を名乗る人物からも「あなたは前世で悪事を行いすぎた。神から力を授かった私が、今すぐ儀式を行って運気を上げなければ、あなたに災難が重なるだろう。」などと告げられました。まさか宗教団体の主催するセミナーだったとは思ってもみなかったのですが、教祖の言葉を聞いて不安に駆られてしまい、直ちに200万円を準備して儀式をしてもらうことにしました。しかし、儀式はほんの5分足らずで終わってしまい、騙されたのではないかと感じています。儀式のために支払った200万円を取り戻したり慰謝料を請求したりすることはできないでしょうか。
人の抱える不安等について,超自然的な事象が原因であると告げて不安感をあおって,現状から脱却するために必要であるとして,物品を購入させたり儀式を行ったりして高額な金銭を支払わせる霊感商法と呼ばれる手法があります。
霊感商法に係って支払ってしまったお金を取り戻すための手段の一つとして,不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる場合があります。不法行為に基づく損害賠償請求という手段をとることには,霊感商法に関する契約の直接の相手方のみならず,その背後に存在する組織等に対しても使用者責任を追及して損害賠償請求をすることができる場合があったり,精神的な損害を被ったとして慰謝料の支払いを求めることができたりする場合があるというメリットがあります。しかし,不法行為に基づく損害賠償請求をするには,霊感商法が違法なものであると認められなければなりません。
宗教団体等が,その宗教の教義を実践したり布教をするための一環として,儀式などの宗教的役務の報酬を求めたり宗教的意義のあるとされる物品の販売を行ったりすることは,支払の対価が高額であるからといって直ちに違法となるわけではないと考えられています。
しかし,霊感商法が宗教団体等の宗教的行為の一環として行われるとしても,それが社会的に相当といえる範囲を逸脱するようなものである場合には,違法となります。どのような場合に社会的な相当性を逸脱するのかについては複数の裁判例がありますが,宗教団体等により行われた行為が,被勧誘者の自由な意思決定を阻害して被勧誘者に過大な金銭の支出をさせたかどうかという点を重視する傾向にあると考えられます。
ご相談の事例では,セミナーにおける勧誘状況や教祖等の言動など,当時の具体的な状況や資料の有無等についてさらに詳細をお伺いした上で,請求が認められる可能性があるかどうかを丁寧に検討する必要があるでしょう。
不法行為に基づく損害賠償請求という手段は選択肢の一つにすぎませんが,お心当たりのある方は,詳細をお伺いしながら取り得る手段の一つについて検討し,ご説明させていただきたいと思いますので,一度事務所にお越しいただけたらと思います。