法律相談例


自分の遺産の相続人を指定したい

 私は、ある機械部品の製造会社(株式会社)を経営し、業績も順調です。これまで工場の設備投資に励んできていて、会社としての資産はかなりあり、株式は100%私が保有しています。私もそろそろ70歳になるので、大学を出てからずっと会社を手伝ってくれている長男に、会社を任せようと思います。ただ、心配なのは、相続のことです。税理士さんのお話によると、会社の株式の評価はかなりの金額で、私の財産の約8割が株式ということになります。そうすると、相続によって、長男以外の二人の子供(どちらも、会社には全くタッチしていません。)にも株式を渡さざるを得なくなり(妻は昨年亡くなっています。)、長男の会社経営がうまくいかなくなってしまうのではないかと心配しているのです。いい方法はないでしょうか。

自分の遺産の相続人を指定したい

1 基本的な解決方法は、当然のことながら遺言です。あなたの財産のうち、会社の株式全部をご長男に相続させるという内容の遺言によって、あなたの死後、ご長男が会社の株式全部を引き継ぐことができるということになります。その他の財産についても、遺言の中で、どれを誰に渡すのかということをはっきりさせた方がいいでしょう。

また、遺言は、公証人役場という公的機関で作成する、「公正証書」にした方がいいと思います。詳しい遺言の内容や公正証書遺言の作成方法については、細かな事情をお知らせいただければ、更にアドバイスさせていただくことができます。

2 ただ、そのような遺言を作成しても、問題となるのは、遺留分という権利です。

例えば、あなたが遺言で会社の株式をご長男に、それ以外の財産の半分ずつを残りのお二人のお子さんに相続させるという遺言を残されたとします。その場合の取り分は、ご長男が8割、残りのお二人が1割ずつ(合計2割)ということになります。

ところが、相続人には、相続財産に対し、法定相続分(お子さんそれぞれ3分の1)の2分の1(お子さんぞれぞれ6分の1)の遺留分という権利があり、その権利は、あなたの遺言によっても覆すことができません。ですから、ご長男以外のお子さん二人あわせて約33%(6分の1×2)の権利があり、不足分の13%(33%-20%)に相当する株式(または、それに相当する現金)を、ご長男に請求できることになります。このことは、生前贈与の方法で株式をご長男に譲っても変わりません。

3 そのようなことになるのを防ぐ方法として、2008年に施行された、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」による、「除外合意」というものがあります。会社の株式を生前贈与の形でご長男に譲り、その分を、他の二人のお子さんを含めた話し合いによって、遺留分の対象から「除外」するという方法です。これによって、会社の株式のすべてを、確実にご長男に譲ることができます。その場合には、家庭裁判所の許可などの手続きが必要であり、一度事務所においでいただければ、詳しくご説明いたします。

 中小企業の経営を円滑に引き継ぐことは、多くの経営者の方にとって深刻な問題です。右にお話しした方法は、一つの選択肢ですが、いずれにしても、早めの対策を検討されることをお勧めいたします。